天国の世界

「天国を再生したいんだ。」

そんな思い付きから始まった、自分たちの力を合わせれば本当の天国が作れるのでは、なんて。

「そんなの再生するまでもない、俺が創りだすよ」なんてDはそっけなく言うけれど、違うんだよ。

俺が言っているのはそういうことじゃない、俺たちの力を集結させた、そういう意味のある天国なんだ。

俺は必要なものを整理することにした。

天国の世界は、まず後回しにして。

・天国の扉

・天国の鍵

・天国の階段

・天国の空間

・天国の音、匂い、色

最低でもこの5つがなければ天国には入れない、ではどこにそれをつくるか?だ。

そのためのキーはかけている、俺たち全員の千賀らが集まったとき開くドアだ、そこからこれらを創り上げていく、そのドアのキーは俺が持っている。

おれはJに頼み、神のノートを借りた、書いたことが真実となる運命のノート、俺が書くのは「天国の再生の成功」だけだ。

これさえ書けば、再生はゆるぎない事実として、俺らに運命の道を提供してくれる。

Dの創りだす天国も、所詮は彼の頭の中からひねり出すものに過ぎない、彼も知らないような、彼すらも創り上げることが出来ないような、本当の天国。

見てみたい。

 

 

 

 

まずは天国をより良くするため、世界を悪くした、この俺の「世界を操る能力で」世界各地に自然災害、虐殺、社会的な不況なんかを起こして全世界を危機に陥れる、そして天国の美化を図った。

次にDの持つ神の懐中時計で時間を操作した、天国が創りやすい、人間の、生物の荒れ果てた世界になるよう、加速させた。

そして、地球から生物が消えた、なぁに心配ない、こんなものいくらでも元通りにできる。

Gから神の鏡を借りた、地球の真実を映し出し、良いもの、希望を全て排除して、地球から植物と酸素と水がなくなった。

つるつるにはげた地球、地面は正真正銘の、でありながら酷な姿になっている地面。

魔物でも置けばここは地獄になるんだろうな、と思いつつ、無駄なものを消す準備に取り掛かっていった。

地球を半径5kmほどのサイズにまで縮めて、より理想的な物にした。

準備はできた。

今こそ天国をつくるためのドアをあけるときだ。

 

 

 

 

背景、景色は真っ白にした、階段だけは透明な、ガラスのようにした。

音は耳障りにならないほどの反響、匂いも充満しにくく、夢の中にもぐりこんだかのようだ。

鍵は指二本分、端っこにこぶし一握りほどの装飾を用いた物とする、そのカギにあう扉は高さ5m、幅が6mの大きな扉。

いよいよだな、と思った。

Dの生み出したこれらの道具には俺を含む他の髪の能力もつぎ込んだ夢のようなアイテムとなってる。

この扉の向こうは一体どんな景色が広がっているのだろうか。

最後に俺の能力を使った、この扉の向こうが天国だ、と。

この意味は昨日書いたノートに言い聞かせたものだ、天国の再生は今だぞ。

失敗はありえない、俺は期待に胸を躍らせながら扉へと入っていった。

 

 

 

 

草原、雲一つない晴天の青空、そこには男と女が一人ずつ、隣り合って座っていた。

アダムとイヴか?

彼らは音も言えない声で会話していた。

この世界での月日の流れは速かった。2時間で朝から昼へと変わってしまう。

なるほど、ここが天国か。

この空間を俺は何もないなんて思わなかった、むしろ十分すぎるほどだった。

Gが言うにはここには無限のエネルギーがある、と。

ああ、つたわるぞ、この世界を。

なるほど、これが天国か。